01
100メートルを3秒で走る怪人
夕暮れの下校中、赤いコートを着て大きなマスクをした女性が声をかけてきます。「私、きれい?」。「きれい」と答えると、「これでも?」とマスクを外し、耳までパックリと裂けた恐ろしい口を見せて襲いかかってきます。
これが「口裂け女」です。彼女は「100メートルを3秒(または6秒)で走る」というオリンピック選手も真っ青の身体能力を持っており、走って逃げ切ることは絶対に不可能だとされていました。


くちさけおんな
口裂け女
01
夕暮れの下校中、赤いコートを着て大きなマスクをした女性が声をかけてきます。「私、きれい?」。「きれい」と答えると、「これでも?」とマスクを外し、耳までパックリと裂けた恐ろしい口を見せて襲いかかってきます。
これが「口裂け女」です。彼女は「100メートルを3秒(または6秒)で走る」というオリンピック選手も真っ青の身体能力を持っており、走って逃げ切ることは絶対に不可能だとされていました。

02
逃げられないなら、どうやって身を守るのか。当時の子供たちの間では、謎の防衛術(サバイバル戦術)がセットで語り継がれました。
「べっこう飴(または黒飴)を投げると、彼女がそれを舐めている隙に逃げられる」というものや、「『ポマード! ポマード!』と3回唱えると、彼女が嫌がって怯む」というものです(美容整形手術の失敗で口が裂けた際、医者のポマードの匂いがトラウマになっているという設定)。全国の子供たちがポケットに飴を忍ばせて下校するほどの社会現象になりました。

03
なぜこの噂は、ネットもない時代に一瞬で全国に広まったのでしょうか。
発端は岐阜県だと言われていますが、当時は「学習塾(塾通い)」が一般化し始めた時代でした。違う学校の子供たちが塾で集まり、そこで聞いた怖い話を次の日に自分の学校のクラスメイトに話し、さらに長電話で遠くの親戚に伝える。この「口コミのアナログネットワーク」が、現代の妖怪を猛スピードで増殖させたのです。「妖怪がいかにして生まれるか」をリアルタイムで証明した、民俗学的に極めて重要な事件です。

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