01
煙の中に浮かび上がる不思議な顔
夕暮れ時、野良仕事が終わって焚き火をしていると、立ち上る煙の形がうねうねと変化し、その中にふわりと「人間の顔」が浮かび上がることがあります。
これが「煙々羅(えんえんら)」です。人を襲うこともなく、何かを語りかけてくることもありません。風が吹けば形を崩し、煙とともに儚く空へ消えていく。物理的な実体を全く持たない、非常に特殊で幻想的な妖怪です。


えんえんら
煙々羅
01
夕暮れ時、野良仕事が終わって焚き火をしていると、立ち上る煙の形がうねうねと変化し、その中にふわりと「人間の顔」が浮かび上がることがあります。
これが「煙々羅(えんえんら)」です。人を襲うこともなく、何かを語りかけてくることもありません。風が吹けば形を崩し、煙とともに儚く空へ消えていく。物理的な実体を全く持たない、非常に特殊で幻想的な妖怪です。

02
この煙々羅には、古い民間伝承(怪談)が存在しません。妖怪絵師である鳥山石燕が、完全に自らのイマジネーションだけで創り出したオリジナル妖怪(創作)だと考えられています。
「羅(ら)」とは、薄くて透き通った布(シルクなど)のことです。煙がゆらゆらと立ち上る様子を薄い布に見立て、「煙々羅(えんえんら)」というリズミカルで美しい名前を付けた石燕のネーミングセンスと、ビジュアルの言葉遊びが光る作品です。

03
石燕はこの絵の解説に「無我の境地にある者(心に余裕がある者)にしか、この姿は見えない」と記しています。
現代の科学で言えば、雲の形や壁のシミが人間の顔に見える「シミュラクラ現象」のことです。忙しくイライラしている時にはただの煙にしか見えないけれど、心が落ち着いて焚き火を眺めている時だけ、煙の中に顔を見つけることができる。江戸時代の絵師は、人間の心理的な錯覚すらも風流な「妖怪」として楽しんでいたのです。

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