01
見えないストーカーの恐怖
暗い夜の田舎道。提灯の明かりを頼りに一人で歩いていると、自分の足音の後ろに重なるように、誰かの足音が聞こえてきます。
「べと、べと、べと……」。立ち止まると足音も止まり、歩き出すとまたついてくる。恐ろしくなって後ろを振り返っても、暗闇の中には誰もいません。姿が見えないまま延々とついてくるこの怪異は「べとべとさん」と呼ばれ、昔の人々を大いに怖がらせました。


べとべとさん
べとべとさん
01
暗い夜の田舎道。提灯の明かりを頼りに一人で歩いていると、自分の足音の後ろに重なるように、誰かの足音が聞こえてきます。
「べと、べと、べと……」。立ち止まると足音も止まり、歩き出すとまたついてくる。恐ろしくなって後ろを振り返っても、暗闇の中には誰もいません。姿が見えないまま延々とついてくるこの怪異は「べとべとさん」と呼ばれ、昔の人々を大いに怖がらせました。

02
この気味の悪いストーカー妖怪から逃れる方法は、走って逃げることでも、お経を唱えることでもありません。
道の端にサッと寄り、後ろに向かってこう言うだけでいいのです。
「べとべとさん、先へお越し(お先にどうぞ)」。
すると足音は、「じゃあお言葉に甘えて」と言わんばかりに、スッと前の方へ通り過ぎていき、そのままどこかへ消えてしまいます。人間に危害を加えるわけではなく、ただ道を急いでいただけの、驚くほど素直で礼儀正しい妖怪なのです。

03
べとべとさんの正体は、暗闇への恐怖が生み出した「音の錯覚」だと言われています。
自分の足音が周囲の壁や木々に反響したものを、誰かがついてくると思い込んでパニックになる。しかし、「お先にどうぞ」と立ち止まって深呼吸し、周囲に気を配ることで、そのパニック(錯覚)はフッと消え去ります。妖怪という形を借りて、夜道のパニックを鎮める知恵と、他者(見えないもの)への気遣いを教える、日本人の優しい精神性が生んだ怪異です。

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