深大寺

じんだいじ

深大寺

Photo: 掬茶 / Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0

深大寺|『西遊記』の砂漠の魔神を祀る縁結びと、大火を生き延びた国宝「白鳳仏」の謎

東京都調布市にある深大寺(じんだいじ)は、浅草寺に次いで東京都内で二番目に古い歴史を持つ天台宗の別格本山です。武蔵野の豊かな湧水に恵まれ、「深大寺そば」や厄除けの「だるま市」で全国的に知られていますが、この寺院の起源には奇妙なねじれとロマンチックな都市伝説が隠されています。 寺の名前の由来となったのは、「深沙大将(じんじゃだいしょう)」という砂漠の魔神です。『西遊記』で三蔵法師を助けたとされるこの砂漠の神が、なぜ水が豊富な武蔵野の寺院のルーツとなったのでしょうか。 さらに、境内には飛鳥時代後期〜奈良時代初期(白鳳時代)に作られた国宝の仏像が安置されています。なぜ中央の都から遠く離れた関東の地に、これほど高度な技術で作られた最古級の仏像が存在し、度重なる火災から無傷で生き延びたのか。水と蕎麦の寺に隠された、古代のミステリーを紐解きます。

基本情報

名称
浮岳山 昌清院 深大寺
読み
ふがくさん しょうせいいん じんだいじ
所在地
東京都調布市深大寺元町5丁目15-1
創建
天平5年(733年)
宗派
天台宗
本尊
阿弥陀三尊
主な見どころ
本堂、釈迦如来倚像(白鳳仏・国宝)、元三大師堂、湧き水
ゆかりの人物
満功上人、深沙大王
砂漠の魔神「深沙大将」が結んだ、親の駆け落ち伝説

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砂漠の魔神「深沙大将」が結んだ、親の駆け落ち伝説

深大寺の開山は、天平5年(733年)に満功上人(まんくうしょうにん)によって行われました。この満功上人の誕生には、あるドラマチックな縁結びの伝説があります。 満功上人の父(福満)は、ある郷長の娘と恋に落ちましたが、娘の親から猛反対され、娘は湖の小島に隔離されてしまいました。福満が水神である「深沙大将」に祈願したところ、霊亀が現れて彼を背中に乗せ、小島へ渡してくれました。二人は結ばれ、やがて生まれた満功上人が、父の願いを受けて深沙大将を祀るために建てたのが深大寺(深沙大将の寺)の始まりです。 奇妙なのは、深沙大将が本来『西遊記』のモデルとなった玄奘三蔵を「砂漠(流砂)」で助けた魔神(沙悟浄のルーツともされる)である点です。砂漠の神が、日本ではなぜか「水神」として反転して信仰され、武蔵野の湧水地で男女の仲を取り持つ縁結びの仏へと変貌を遂げたという、宗教伝播のバグのような不思議な現象が起きています。

なぜ武蔵野に? 謎に包まれた国宝「白鳳仏」Photo: Unknown author Unknown author / Wikimedia Commons / Public domain

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なぜ武蔵野に? 謎に包まれた国宝「白鳳仏」

深大寺の釈迦堂に安置されている「銅造釈迦如来倚像(どうぞうしゃかにょらいいぞう)」は、平成29年(2017年)に国宝に指定されました。東日本では極めて珍しい白鳳時代(7世紀後半〜8世紀初頭)の金銅仏であり、椅子に腰掛けるスタイル(倚像)は、奈良の新薬師寺の仏像と共通する高度なデザインを持っています。 最大のミステリーは、「なぜ当時の都(近畿)で作られた最高傑作クラスの仏像が、辺境であった武蔵野の深大寺にあるのか」ということです。 朝廷が関東の有力豪族に下賜したとする説や、渡来人が持ち込んだとする説などがありますが、確固たる記録は残っていません。また、深大寺は慶応元年(1865年)の大火をはじめ、歴史上で何度も全焼の憂き目に遭っていますが、この仏像だけは燃える本堂から運び出され、あるいは密かに隠されて生き延びました。「いざという時は、この仏様だけは何としても守れ」という暗黙のルールが、千年以上もの間、歴代の僧侶たちに受け継がれてきた証と言えます。 (画像)銅造釈迦如来倚像(国宝)

湧水と凶作の歴史が生んだ「深大寺そば」Photo: Takashi Hososhima from Tokyo, Japan / Wikimedia Commons / CC BY-SA 2.0

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湧水と凶作の歴史が生んだ「深大寺そば」

深大寺といえば「深大寺そば」が有名ですが、これにも寺の環境と歴史が密接に関わっています。深大寺の周辺は、国分寺崖線(はけ)と呼ばれる地形から豊富で清冽な地下水が湧き出しており、現在も境内のあちこちで水路が音を立てています。 江戸時代、この地域は土地が痩せていて米の栽培に向かず、凶作に苦しんでいました。そこで小作人たちは米の代わりに蕎麦を作り、豊富な湧水で打った蕎麦を深大寺に納めました。寺はそれを来客にもてなしたところ、「水が良いから蕎麦が格別に美味い」と江戸中の評判となり、第三代将軍・徳川家光が鷹狩りの際に立ち寄って賞賛したことで、その名声は不動のものとなりました。 砂漠の神を起源に持ちながら、豊かな湧水によって命を繋ぎ、名物蕎麦の文化を生み出した深大寺。水にまつわる信仰と人々の生活の知恵が、現在もそのまま観光の魅力として受け継がれています。

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