室生寺

むろうじ

室生寺

室生寺|なぜ仏像が「ぽっちゃり」しているのか。女性を救済し続けた女人高野・室生寺の優しい世界

高野山が「女性立ち入り禁止」だった時代に、すべての女性を温かく迎え入れた奈良の山寺・室生寺。「女人高野」と呼ばれ愛されたこのお寺の仏像たちは、なぜか皆少し「ぽっちゃり」としていて優しい顔立ちをしています。日本最小の屋外五重塔が台風で倒壊した絶望から、見事に蘇った奇跡の復興劇とともに、癒しの寺の秘密に迫ります。

基本情報

名称
室生寺
読み
むろうじ
所在地
奈良県宇陀市室生78
創建
宝亀年間(770〜781年)伝承
宗派
真言宗室生寺派(大本山)
本尊
釈迦如来
主な見どころ
五重塔(国宝)、金堂、十一面観音菩薩像
ゆかりの人物
役小角、空海、修円

室生寺を、なぜ仏像が「ぽっちゃり」しているのか。女性を救済し続けた女人高野・室生寺の優しい世界という切り口から読み直します。

01

「女性立ち入り禁止」の常識を打ち破った寺

平安時代に空海が開いた真言宗の聖地・高野山は、厳格な修行の場であったため、明治時代に至るまで長らく「女人禁制(女性は山に入ってはいけない)」というルールがありました。当時の仏教界では、女性の存在が修行の妨げになると考えられていたためです。しかし、同じ真言宗の寺院でありながら、室生寺は全く違う方針をとりました。古くから女性の参拝を広く許可し、祈りの門を開き続けたのです。そのため、高野山にお参りできない女性たちは、こぞってこの室生寺へと足を運びました。誰が呼ぶともなく、いつしか人々はこの寺を親しみと感謝を込めて「女人高野」と呼ぶようになったのです。

「女性立ち入り禁止」の常識を打ち破った寺

「女性立ち入り禁止」の常識を打ち破った寺

Photo: LEGACY_REFERENCE: /var/lib/are-iina/unpublished/temples/muroji

02

仏像が「ぽっちゃり」している室生寺様式

室生寺の優しさは、ルールだけでなく「仏像の顔」にも表れています。金堂に安置されている十一面観音菩薩像や、釈迦如来像などの国宝仏像群をよく見てください。一般的な仏像に比べて、頬がふっくらとしていて、全体的に「ぽっちゃり」とした丸みを帯びているのが特徴です。また、衣のシワ(翻波式衣文)も非常に柔らかく波打っています。これを美術史では「室生寺様式」と呼びます。厳しい修行を強いるような険しい顔ではなく、すべてを包み込んでくれるような母性的なふくよかさ。山奥まで苦労して歩いてきた女性参拝者たちは、この丸顔で優しい微笑みを浮かべる仏様たちを見上げて、どれほど心が救われたことでしょう。

仏像が「ぽっちゃり」している室生寺様式

仏像が「ぽっちゃり」している室生寺様式

Photo: LEGACY_REFERENCE: /var/lib/are-iina/unpublished/temples/muroji

03

台風で倒壊した「日本最小の五重塔」の奇跡

室生寺のシンボルは、境内の奥に建つ高さ約16メートルの「五重塔」です。屋外に立つ五重塔としては日本で最も小さく、森の木々に溶け込むような愛らしい姿で知られています。しかし平成10年(1998年)、凄まじい勢力の台風7号が室生寺を襲いました。巨大な杉の木が倒れ、あろうことかこの国宝の五重塔を直撃。屋根が大きくえぐられ、無残に破壊されてしまったのです。「もう元には戻らないかもしれない」と多くの人が絶望しました。ところが、ここから奇跡の復興劇が始まります。全国の寺院ファンや地元の人々から、数億円もの寄付金がまたたく間に集まりました。そして、宮大工たちが懸命な修復作業を行い、わずか2年という異例のスピードで、五重塔は元の美しい姿を取り戻したのです。女性たちを救済し続けてきた優しいお寺は、いざという時に、全国の人々の「愛情と寄付」によって見事に救い出されたのでした。(まとめ)女性を排除することなく受け入れ、ふくよかな仏像の微笑みで心を癒してきた室生寺。日本最小の五重塔が台風の傷跡から蘇った姿には、長い歴史の中でこの寺がどれほど人々に愛されてきたかが刻まれています。石段を登り、深い森の静寂に包まれた時、室生寺ならではの「優しい祈りの空気」を全身で感じることができるはずです。

台風で倒壊した「日本最小の五重塔」の奇跡

台風で倒壊した「日本最小の五重塔」の奇跡

Photo: LEGACY_REFERENCE: /var/lib/are-iina/unpublished/temples/muroji

SAME CATALOG

同じ図鑑のほかの記事