円覚寺

えんがくじ

円覚寺

Photo: Fg2 / Wikimedia Commons / Public domain

円覚寺|敵も味方も関係ない。元寇の戦死者を「平等」に弔った円覚寺の規格外のスケールと仏の慈悲

鎌倉時代、日本を滅亡の危機に陥れたモンゴル帝国の「元寇」。その激戦の直後に建てられた円覚寺は、なんと「味方の日本武士だけでなく、敵のモンゴル兵の魂も平等に弔う」という規格外の目的で創建されました。文豪・夏目漱石も逃げ出した厳しい座禅修行と、奇跡的に震災を生き延びた国宝・舎利殿の物語をご紹介します。

基本情報

名称
瑞鹿山 円覚寺
読み
ずいろくさん えんがくじ
所在地
神奈川県鎌倉市山ノ内409
創建
弘安5年(1282年)
宗派
臨済宗円覚寺派(大本山)
本尊
宝冠釈迦如来
主な見どころ
三門、仏殿、舎利殿(国宝)、洪鐘(国宝)
ゆかりの人物
北条時宗、無学祖元、夏目漱石
侵略者(モンゴル軍)をも弔う「怨親平等」の精神

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侵略者(モンゴル軍)をも弔う「怨親平等」の精神

円覚寺を発願したのは、元寇という未曾有の国難に立ち向かった若き鎌倉幕府の執権・北条時宗です。 二度にわたるモンゴル軍の襲来(文永の役・弘安の役)により、日本側も敵側も数え切れないほどの戦死者を出しました。 時宗はこの凄惨な戦いの後、自らの師である中国の高僧・無学祖元(むがくそげん)を開山として円覚寺を創建します。 驚くべきは、その創建の目的です。 「国を守るために死んだ日本の武士たちを弔う」だけでなく、「日本を侵略しにきて死んだモンゴル兵たちも、分け隔てなく平等に弔う」と宣言したのです。 これを仏教用語で「怨親平等(おんしんびょうどう)」と言います。憎き敵であっても、死ねばみな同じ仏の子であるという、当時の常識を覆すほどのスケールの大きなヒューマニズムが、円覚寺のルーツなのです。

夏目漱石が逃げ出した? 厳しい座禅修行と名作『門』

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夏目漱石が逃げ出した? 厳しい座禅修行と名作『門』

円覚寺は「座禅の道場」としても非常に有名です。 明治時代以降、多くの文化人や知識人がここを訪れて修行に励みました。 その中の一人が、若き日の文豪・夏目漱石です。神経衰弱に悩んでいた漱石は、心の平安を求めて円覚寺の塔頭(たっちゅう)である帰源院に滞在し、本格的な座禅修行に挑みました。 しかし、いくら座っても悟りは開けず、禅の難解な問い(公案)に答えることもできず、結局は挫折して山を下りてしまいます。この時の苦い経験が、後に彼の名作小説『門』に生かされています。 主人公の宗助が救いを求めて鎌倉の禅寺(円覚寺がモデル)の門を叩くものの、結局は「門を開けてもらうことはできなかった」と悟る有名なシーンは、漱石自身の円覚寺でのリアルな挫折体験から生まれたものです。

関東大震災を生き延びた国宝「舎利殿」の奇跡Photo: Tsuyoshi chiba / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0

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関東大震災を生き延びた国宝「舎利殿」の奇跡

円覚寺の境内の最も奥まった場所に、国宝に指定されている「舎利殿(しゃりでん)」があります。 お釈迦様の歯(仏牙舎利)を祀るこの建物は、鎌倉時代から室町時代にかけての「禅宗様(ぜんしゅうよう)」という中国風の建築様式を今に伝える、日本最古級にして最高傑作の木造建築です。 実はこの建物、円覚寺が創建された当初からここにあったわけではありません。 室町時代に別の尼寺(太平寺)に建てられたものを、江戸時代に移築したものです。 大正12年(1923年)の関東大震災で、円覚寺の建物の大半が倒壊するという壊滅的な被害を受けましたが、この舎利殿だけは奇跡的に倒壊を免れました。 細かい木組みを複雑に組み合わせた禅宗様の建築技術が、激しい地震の揺れを見事に吸収したからです。 怨親平等の祈りから始まり、震災を乗り越えたこの寺は、不屈の精神の象徴として鎌倉の奥深くに鎮座しています。

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