高徳院(鎌倉大仏)

ことくいんだいぶつ

高徳院(鎌倉大仏)

Photo: くろふね / Wikimedia Commons / CC BY 4.0

高徳院(鎌倉大仏)|室町時代の大津波伝説と、大仏の背中に開いた「二つの窓」の謎

神奈川県鎌倉市長谷にある高徳院(こうとくいん)は、浄土宗の寺院であり、国宝「銅造阿弥陀如来坐像」、いわゆる「鎌倉大仏」の本尊として全国的に知られています。 奈良の東大寺の大仏と並び称される巨大仏ですが、その最大の違いは、大仏を覆う建物(大仏殿)が存在せず、屋外にむき出しで鎮座している(露座)という点です。 実は、大仏が建造された当初は立派な大仏殿が存在していましたが、室町時代に起きた「ある災害」によって建物だけが消失してしまったと伝えられています。 また、大仏の背中側に回り込むと、まるでロボットの操縦席のような「二つの窓」が開いており、これにまつわる奇妙な都市伝説も存在します。 誰が何のために造ったのかすら正確な記録が残っていない、ミステリーに満ちた鎌倉大仏の謎に迫ります。

基本情報

名称
高徳院(鎌倉大仏)
読み
こうとくいん(かまくらだいぶつ)
所在地
神奈川県鎌倉市長谷4丁目2-28
創建
建長4年(1252年)鋳造開始
宗派
浄土宗
本尊
阿弥陀如来(国宝・鎌倉大仏)
主な見どころ
鎌倉大仏(胎内拝観)
ゆかりの人物
源頼朝、浄光(勧進僧)
消えた巨大な「大仏殿」と、室町時代の大津波伝説

01

消えた巨大な「大仏殿」と、室町時代の大津波伝説

現在の鎌倉大仏は青空の下にポツンと座っていますが、鎌倉時代の書物『吾妻鏡』などによれば、当初は大仏を雨風から守る巨大な「大仏殿」が建てられていました。大仏の周囲を歩くと、かつて建物を支えていた巨大な丸い礎石がいくつも残っているのがわかります。 では、大仏殿はどこへ消えてしまったのでしょうか。寺伝や『太平記』によれば、建武元年(1334年)や応安2年(1369年)の台風で倒壊した記録があり、決定打となったのは明応7年(1498年)に発生した大地震(明応地震)に伴う「巨大津波」だとされています。 由比ヶ浜から押し寄せた大津波が内陸深くの長谷まで到達し、巨大な大仏殿を丸ごと飲み込んで海へ持ち去ってしまったというのです。木造の建物が流されても、重量121トンもの青銅の大仏だけは流されずにその場に残り続け、現在のような「露座の大仏」になったという、自然の猛威と大仏のスケールを物語る壮絶な伝説です。

大仏の背中に開いた「二つの窓」をめぐる噂と真実Photo: 江戸村のとくぞう / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0

02

大仏の背中に開いた「二つの窓」をめぐる噂と真実

鎌倉大仏を正面から参拝した後、裏側に回り込むと、大仏の背中(肩甲骨のあたり)に四角い窓のような穴が二つ、ぽっかりと開いていることに気づきます。観音開きの扉が付いたこの窓は、巨大ロボットのハッチのようにも見えます。 この不自然な穴については、「大仏に魂を入れた後、職人が外に出るための穴」「大仏の胎内で博打や密会をするための出入り口」といった奇妙な都市伝説がまことしやかに語られてきました。 しかし真実は、鋳造(ちゅうぞう)という金属加工の技術的な理由によるものです。この大仏は、土で作った型の間に溶けた青銅を流し込んで造られました。青銅が冷えて固まった後、内側に残っている大量の「土(中型)」をかき出す作業が必要になります。背中の窓は、その土を外に運び出すための作業用の穴であり、同時に大仏内部の換気や採光を兼ねた実用的な設備だったのです。

美男すぎるのはなぜ? 与謝野晶子が詠んだ勘違い

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美男すぎるのはなぜ? 与謝野晶子が詠んだ勘違い

明治時代の歌人・与謝野晶子は、鎌倉大仏を訪れた際に次のような有名な短歌を詠んでいます。 「かまくらや みほとけなれど 釈迦牟尼(しゃかむに)は 美男におはす 夏木立かな」 この歌で晶子は大仏を「美男」と絶賛していますが、実は大きな勘違いをしています。鎌倉大仏は「阿弥陀如来」であり、「釈迦牟尼(お釈迦様)」ではありません。 では、なぜ晶子が「美男」と感じたのか? 実は、奈良の東大寺の大仏(天平文化)が、ふっくらとして威厳に満ちた顔立ちであるのに対し、鎌倉大仏は中国の宋代の美術様式の影響を強く受けています。ややうつむき加減で、エキゾチックな顔立ちとシャープな衣のシワを持つその姿は、当時の最先端のデザインであり、それが近代の晶子の目には憂いを帯びたハンサムな男性(美男)として映ったのです。

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