唐招提寺

とうしょうだいじ

唐招提寺

Photo: Naokijp / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0

唐招提寺|日本の僧侶には「資格」がなかった。失明した鑑真和上がシルクロードの終着点に建てた奇跡の寺

「日本の僧侶には資格がない!」そんな衝撃的な理由から、命懸けで中国から渡ってきた鑑真和上。5度の遭難で失明しながらも彼が建てた唐招提寺の金堂は、ギリシャのパルテノン神殿と同じ「エンタシス(柱の膨らみ)」を持っています。目が見えない鑑真が、どうやってこれほど美しい仏像や建物を造り上げたのか、その執念の物語に迫ります。

基本情報

名称
唐招提寺
読み
とうしょうだいじ
所在地
奈良県奈良市五条町13-46
創建
天平宝字3年(759年)
宗派
律宗(総本山)
本尊
盧舎那仏
主な見どころ
金堂(国宝)、講堂、鑑真和上坐像
ゆかりの人物
鑑真和上
日本の仏教界を根底から覆した「戒律」の導入

01

日本の仏教界を根底から覆した「戒律」の導入

奈良時代、日本の仏教界は大きな問題を抱えていました。 僧侶になるための正式なルール(戒律)や、それを授ける「正式な資格を持った師匠」が日本に一人もいなかったのです。 極端に言えば、当時の日本の僧侶は全員「自称・僧侶」でした。税金を逃れるために勝手に頭を丸める者が続出し、国家は頭を抱えていました。 そこで、唐で最高の権威を持っていた鑑真に「どうか日本に来て、正式なルール(戒律)を伝えてほしい」と懇願しました。 鑑真はこれに応じ、弟子たちの反対を押し切って日本への渡航を決意します。しかし、当時の航海は命懸けです。嵐や海賊、さらには弟子の裏切りなどにより、鑑真は5度も渡航に失敗。 その過酷な旅の途中で感染症にかかり、両目の視力を完全に失ってしまいます。 それでも諦めず、6度目の航海でついに日本の土を踏んだ時、彼はすでに66歳になっていました。唐招提寺は、彼が日本に正式な僧侶の資格(戒壇)を根付かせるために開いた、彼自身の私寺(プライベートな修行道場)なのです。

パルテノン神殿と同じ「エンタシスの柱」Photo: z tanuki / Wikimedia Commons / CC BY 3.0

02

パルテノン神殿と同じ「エンタシスの柱」

唐招提寺の顔である「金堂(こんどう)」の前に立つと、誰もがその堂々たる姿に見惚れます。 屋根を支える太い柱をよく見てください。柱の真ん中あたりが、わずかに「ふくらんで」いるのがわかります。 これは「エンタシス」と呼ばれる建築技法です。 古代ギリシャのパルテノン神殿などに用いられた技法で、真っ直ぐな柱を下から見上げると中央が細く凹んで見えてしまう目の錯覚を防ぐため、あえて中央を膨らませて設計する手法です。 ギリシャで生まれたこの建築デザインが、シルクロードを通って中国へ伝わり、さらに鑑真たちとともに海を渡って、極東の島国である日本の唐招提寺に辿り着いたのです。 金堂の柱は、世界をつなぐ文化の道(シルクロード)の終着点を示す、雄弁な証拠品と言えます。

目が見えない鑑真はどうやって仏像を造ったのか

03

目が見えない鑑真はどうやって仏像を造ったのか

唐招提寺の仏像(本尊の盧舎那仏や、千手観音など)は、圧倒的なボリューム感と力強さを持つ「唐招提寺様式」として知られています。 しかし、プロデューサーである鑑真の目は見えません。どうやってこの美しい造形を指導したのでしょうか? 伝承によれば、鑑真は同行してきた唐の天才仏師たちに仏像を彫らせ、完成した仏像の顔や体を「自らの指先で撫でて」、その美しさや比率を確かめたとされています。 視覚を失った分、極限まで研ぎ澄まされた触覚によって、本場の唐の最新デザインが間違いないか、仏の慈悲が表現されているかをミリ単位でチェックしたのです。 また、鑑真自身の姿を写した「鑑真和上坐像(国宝)」は、日本最古の肖像彫刻とされています。 静かに目を閉じ、波乱万丈の人生を受け入れたその穏やかな表情は、鑑真が弟子たちにどれほど深く愛され、尊敬されていたかを物語っています。(まとめ)自らの視力を犠牲にしてまで、日本に「本当の仏教」を根付かせようとした鑑真和上。 唐招提寺のエンタシスの柱や、力強い仏像の数々は、国境を越えた強烈な使命感と、目が見えなくても心で美しさを捉えた一人の高僧の執念の結晶です。静かな境内に立つとき、遠くシルクロードから吹き抜けてきた天平の風を感じることができるはずです。

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