仁和寺

にんなじ

仁和寺

Photo: Basile Morin / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0

仁和寺|歴代天皇の血脈を受け継ぐ「御室御所」と、京都御所から移築された壮麗な宮殿建築

京都府京都市右京区にある仁和寺(にんなじ)は、仁和4年(888年)に宇多天皇が創建した真言宗御室派の総本山です。歴代の皇族が住職を務める「門跡寺院(もんぜきじいん)」の筆頭格として絶大な権威を誇り、「御室御所(おむろごしょ)」と尊称されました。 境内には、江戸時代に京都御所から移築された優雅な宮殿建築群や、遅咲きで背の低い名勝「御室桜」が広がり、天皇の住まいと同等の雅な空間が保たれています。応仁の乱で全山が灰燼に帰す悲劇を乗り越え、皇室の伝統と仏教信仰を現代に伝え続ける世界遺産・仁和寺の特異な歴史を紐解きます。

基本情報

名称
仁和寺
読み
にんなじ
所在地
京都府京都市右京区御室大内33
創建
仁和4年(888年)
宗派
真言宗御室派(総本山)
本尊
阿弥陀如来
主な見どころ
御殿、御室桜、五重塔、二王門
ゆかりの人物
宇多天皇、吉田兼好
宇多天皇の出家と、皇族がトップを務める「門跡寺院」の始まり

01

宇多天皇の出家と、皇族がトップを務める「門跡寺院」の始まり

仁和寺は、第58代光孝天皇の勅願によって建設が始まり、その遺志を継いだ第59代宇多天皇によって完成しました。寺号は完成時の元号である「仁和」から名付けられています。 創建から約10年後、宇多天皇は天皇の位を退いて出家し、仁和寺の境内に「御室(おむろ)」と呼ばれる僧坊(住居)を構えて自ら住職となりました。これが、皇族や貴族の子弟が代々住職を務める「門跡寺院」という制度の始まりです。 以降、幕末に至るまでの約千年間にわたり、仁和寺の住職(門跡)は代々皇室出身の法親王(ほっしんのう)が務めました。境内は単なる宗教施設ではなく、天皇家の別邸としての極めて高い格式を持ち、仁和寺一帯の地名が現在も「御室」と呼ばれているのはこの由緒に由来しています。

京都御所の「紫宸殿」を丸ごと移築した国宝・金堂Photo: 663highland / Wikimedia Commons / CC BY 2.5

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京都御所の「紫宸殿」を丸ごと移築した国宝・金堂

平安時代から栄華を極めた仁和寺ですが、応仁の乱(1467年〜)の戦火に巻き込まれ、境内は悉く焼け落ちてしまいました。その後、約160年もの間、仁和寺は荒廃した状態が続きます。 この窮地を救ったのが、江戸幕府の第三代将軍・徳川家光です。寛永年間(17世紀前半)、家光の巨額の資金援助により仁和寺の大規模な再建が行われました。折しも同時期に京都御所の改築が行われていたため、御所の不要になった建物を解体し、仁和寺へ下賜して再利用するという大胆な手法が取られました。 現在の仁和寺の本堂にあたる「金堂(国宝)」は、当時の京都御所の正殿であった「紫宸殿(ししんでん)」を移築したものです。現存する最古の紫宸殿の遺構であり、宮殿建築特有の蔀戸(しとみど)や檜皮葺(ひわだぶき)の屋根など、仏教建築とは異なる天皇の儀式空間の造形を現在に伝えています。

なぜ背が低い? 粘土質の土壌が生んだ名勝「御室桜」の秘密Photo: Nekosuki / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0

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なぜ背が低い? 粘土質の土壌が生んだ名勝「御室桜」の秘密

仁和寺の春の代名詞といえば、境内の西側に群生する「御室桜(おむろざくら)」です。京都で最も遅く咲く桜として知られていますが、最大の特徴はその「背の低さ」にあります。通常の桜が見上げるほどの高さに成長するのに対し、御室桜は樹高が2〜3メートルほどしかなく、目の前で花を楽しむことができます。 この奇妙な樹形は、長らく「品種によるもの」と思われてきましたが、近年の地質調査によって思わぬ事実が判明しました。桜が植えられている地下の浅い部分に、硬い粘土質の岩盤(土壌)が広がっていたのです。 根を地中深くへ伸ばすことができないため、樹木は上への成長を止め、栄養を横へ広げることで生き延びようとしました。過酷な土壌環境が偶然生み出した突然変異ともいえる樹形が、結果的に「目の高さで花見ができる特別な桜」として、江戸時代から現代に至るまで多くの人々を魅了し続けているのです。

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