醍醐寺

だいごじ

醍醐寺

Photo: Nekosuki / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0

醍醐寺|京都最古の木造建築「五重塔」と、秀吉が死の直前に執念で復興した花見の舞台

京都府京都市伏見区に広大な寺域を構える醍醐寺(だいごじ)は、真言宗醍醐派の総本山であり、世界遺産にも登録されている巨刹です。貞観16年(874年)、空海の孫弟子にあたる理源大師聖宝(りげんだいししょうぼう)が笠取山(醍醐山)の山頂付近に小堂を建てたのが始まりとされています。 醍醐寺の歴史を語る上で欠かせないのが、京都という都市が経験した「破壊」と「復興」の生々しい痕跡です。境内には、室町時代の応仁の乱による大火災を奇跡的に免れた京都最古の木造建築「五重塔」がそびえ立っています。 さらに、戦乱で荒廃していたこの寺院に再び命を吹き込んだのが、天下人・豊臣秀吉です。彼が死の直前に総力を挙げて復興し、盛大な宴を催した「醍醐の花見」の舞台として、権力者の最期の輝きと美意識が、三宝院庭園などの壮麗な空間に現在も色濃く残されています。

基本情報

名称
醍醐寺(だいごじ)
読み
だいごじ
所在地
京都府京都市伏見区
創建
貞観16年(874年)
宗派
真言宗醍醐派(総本山)
本尊
薬師如来
主な見どころ
平地の「下醍醐」と山上の「上醍醐」で世界観が完全に異なる
ゆかりの人物
理源大師聖宝
名前
醍醐寺
険しい山道を登る「上醍醐」と、湧き続ける霊泉Photo: Dokudami / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0

01

険しい山道を登る「上醍醐」と、湧き続ける霊泉

醍醐寺の広大な境内は、山の麓にある「下醍醐(しもだいご)」と、山頂付近にある「上醍醐(かみだいご)」の二つのエリアに大きく分かれています。観光客の多くは平坦な下醍醐のみを散策しますが、醍醐寺の真の原点は、標高約450メートルの険しい山道を1時間近く登った先にある上醍醐にあります。 貞観16年(874年)、開山の聖宝がこの山を登っていた際、山の神の化身である老翁から霊泉の場所を教えられました。その泉の水を一口飲んだ聖宝が「ああ、醍醐味なるかな(仏教における最上の味)」と感嘆したことが、寺の名称の由来となっています。 現在でも上醍醐にはこの「醍醐水」が絶えることなく湧き出しており、修験道(山岳信仰)の厳しい修行の場として開かれた密教寺院の、荒々しくも神聖な原風景を体感することができます。

応仁の乱を生き延びた京都最古の木造建築「五重塔」Photo: Zairon / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0

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応仁の乱を生き延びた京都最古の木造建築「五重塔」

下醍醐の林立する堂宇の中で、ひときわ高い歴史的価値を持つのが国宝の「五重塔」です。この塔は、醍醐寺を手厚く保護した醍醐天皇の菩提を弔うため、息子の村上天皇の命によって天暦5年(951年)に完成しました。 京都の街は、室町時代の「応仁の乱(1467年〜)」をはじめとする度重なる戦火によって、古い建造物の大半が灰燼に帰しています。当時の醍醐寺も例外ではなく、下醍醐の堂宇はほぼすべて焼き尽くされましたが、驚くべきことにこの五重塔だけが奇跡的に延焼を免れました。 つまり、この高さ約38メートルの塔は、平安時代中期の建築様式を現在に伝える「京都府内で最古の木造建築物」なのです。塔の内部の壁や柱には、日本の密教絵画の源流とも言える両界曼荼羅や真言八祖の壁画(国宝)が描かれており、10世紀の空間がそのままタイムカプセルのように保存されています。

秀吉が死の5ヶ月前に執念で造営した「三宝院庭園」と花見Created by are-iina

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秀吉が死の5ヶ月前に執念で造営した「三宝院庭園」と花見

戦乱で長期にわたり荒廃していた醍醐寺に、救いの手を差し伸べたのが豊臣秀吉です。慶長3年(1598年)の春、秀吉は諸大名やその正室・側室ら約1,300人を招き、盛大な「醍醐の花見」を催しました。 これは単なる宴会ではありませんでした。花見のために秀吉は、畿内から約700本もの桜の木を醍醐寺に移植させ、自ら下見を繰り返して境内の殿舎や庭園の大規模な改修・再建を命じたのです。特に、歴代座主の居住空間である「三宝院(さんぼういん)」の庭園は、秀吉自らが基本設計を行ったとされ、特別史跡および特別名勝に指定される極めて華麗な大名庭園として完成しました。 秀吉がこの巨大な国家的プロジェクトとも言える花見と寺院復興を行ったのは、自身の死のわずか5ヶ月前のことです。天下人の最期の権力誇示と、死を前にした強烈な美への執着が、醍醐寺を京都屈指の桜の名所として現代に蘇らせたのです。

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