01
異類婚姻譚の王道「鶴の恩返し」の神話版
豊玉毘売(トヨタマヒメ)は、夫の火遠理命(山幸彦)の子を身籠り、出産のために地上へやってきます。
海辺に産屋(うぶや)を建てていた彼女は、夫にこう告げました。「他の国の者は、出産の時には本来の国の姿に戻ります。私も元の姿で産むので、絶対に中を覗かないでください」。これは日本の昔話に共通する「見るなのタブー(鶴の恩返しなど)」の最も古い原型の一つです。


とよたまびめ
豊玉毘売
01
豊玉毘売(トヨタマヒメ)は、夫の火遠理命(山幸彦)の子を身籠り、出産のために地上へやってきます。
海辺に産屋(うぶや)を建てていた彼女は、夫にこう告げました。「他の国の者は、出産の時には本来の国の姿に戻ります。私も元の姿で産むので、絶対に中を覗かないでください」。これは日本の昔話に共通する「見るなのタブー(鶴の恩返しなど)」の最も古い原型の一つです。

02
「覗くな」と言われれば覗きたくなるのが人間の(神の)サガ。夫の火遠理命は我慢できずに、こっそりと産屋の中を覗き込んでしまいました。
そこに美しい妻の姿はありませんでした。産屋の中では、巨大な「八尋和邇(やひろわに)」が腹を波打たせてのたうち回り、這いずり回っていたのです。この「ワニ」とは爬虫類のクロコダイルではなく、古代日本語における「巨大なサメ(フカ)」、あるいは海の怪獣を指すとされています。恐怖した夫は、思わず逃げ出してしまいました。

03
無事に出産を終えたトヨタマヒメですが、夫に正体を見られ、しかも逃げられたことに気づき、激しい羞恥心と怒りを感じます。
「私は海と陸を自由に行き来できるようにしようと思っていたのに、恥をかかされたのでもう帰りません!」
彼女は生んだばかりの子供を置いて海へ帰り、海と陸を繋いでいた道(海坂)を完全に塞いでしまいました。これ以降、海の神々が地上にやってくることはなくなったとされています。美しい恋愛物語は、異文化コミュニケーションの失敗によってほろ苦い結末を迎えました。

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