01
怒るのは無理もない「釣り針紛失事件」
童話ではいじわるな兄として描かれがちな火照命ですが、発端の事件を冷静に見ると、彼は完全な被害者です。
弟のワガママで道具を交換してやったのに、大切な釣り針(当時は命を繋ぐ貴重な生業の道具)をなくされてしまいました。弟が代わりの針を大量に作ってきましたが、「手に馴染んだ自分の道具でなければ魚は釣れない」と突っぱねたのは、プロの漁師としての当然の矜持とも言えます。しかし、彼が弟を許さなかったことが、結果的に自分自身を破滅へ導きます。


ほでりのみこと
火照命
01
童話ではいじわるな兄として描かれがちな火照命ですが、発端の事件を冷静に見ると、彼は完全な被害者です。
弟のワガママで道具を交換してやったのに、大切な釣り針(当時は命を繋ぐ貴重な生業の道具)をなくされてしまいました。弟が代わりの針を大量に作ってきましたが、「手に馴染んだ自分の道具でなければ魚は釣れない」と突っぱねたのは、プロの漁師としての当然の矜持とも言えます。しかし、彼が弟を許さなかったことが、結果的に自分自身を破滅へ導きます。

02
海神の宮殿から帰ってきた弟は、海神の強力なバックアップ(呪いの言葉と水のコントロール)を受けていました。
火照命の田んぼには水が引かず大凶作となり、彼はあっという間に経済的に困窮します。たまりかねて弟に武力行使を仕掛けますが、弟は「塩満玉」という魔法アイテムで急激な洪水を起こし、兄を水攻めにしました。海幸彦でありながら海神の力に溺れさせられるという、残酷なまでのオーバーキルです。

03
殺される寸前まで追い詰められた火照命は、「これからは弟の昼夜の守護人(奴隷)として仕えます」と降伏します。
『古事記』には、この時降伏した兄が、「溺れる時の苦しむ姿」を真似た滑稽なダンスを踊らされたと記されています。この屈辱的なダンスは「隼人舞(はやとまい)」と呼ばれ、火照命の子孫とされる隼人族が、大和王権(天皇)に対して服従を誓う儀式として、後世の朝廷でも実際に踊られ続けました。神話のエピソードが、現実の部族の服従の歴史に直結しているのです。

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