01
「火事になればまた会える」という狂気
八百屋の娘であったお七(おしち)は、江戸の大火事で家が焼け出された際、避難先の円乗寺で寺小姓の吉三郎(きちざぶろう)と出会い、激しい恋に落ちます。
やがて家が再建されて実家に戻ったお七ですが、吉三郎に会えない寂しさで心が壊れていきます。そして「もう一度火事になれば、またお寺に避難して彼に会えるはずだ!」という、純粋すぎるがゆえの恐ろしい短絡思考に行き着き、自らの家に火を放ってしまったのです。


やおやおしち
八百屋お七
01
八百屋の娘であったお七(おしち)は、江戸の大火事で家が焼け出された際、避難先の円乗寺で寺小姓の吉三郎(きちざぶろう)と出会い、激しい恋に落ちます。
やがて家が再建されて実家に戻ったお七ですが、吉三郎に会えない寂しさで心が壊れていきます。そして「もう一度火事になれば、またお寺に避難して彼に会えるはずだ!」という、純粋すぎるがゆえの恐ろしい短絡思考に行き着き、自らの家に火を放ってしまったのです。

02
放火(火付け)は江戸時代において死刑(火あぶり)となる大罪です。当時の法律では、15歳以下なら死刑を免れる可能性がありました。
取り調べをしたお奉行様も、彼女の幼さと恋心に同情し、「お前は15歳だな?」と助け船を出します。しかし、正直すぎる(あるいは恋に夢中な)お七は「いいえ、16歳です」と答えてしまい、情状酌量の余地なく、鈴ヶ森刑場で生きたまま火あぶりにされるという極めて残酷な最期を遂げました。

03
このショッキングなニュースは江戸中で大騒ぎとなり、井原西鶴の小説などを経て、浄瑠璃や歌舞伎の格好の題材となりました。
現実の放火犯から一転、お七は「恋のために命を懸けた純情な少女」として美化され、雪の夜に火の見櫓の太鼓を叩くシーンや、死後に悲恋の亡霊として吉三郎の前に姿を現す演出などが作られました。厳しい法律と引き裂かれた恋の悲劇が、彼女を江戸時代の「最強のアイドル幽霊」へと押し上げたのです。

SAME CATALOG