01
阿弥陀寺の夜の「シークレットライブ」
盲目の琵琶法師・芳一は、平家物語を弾き語る天才でした。ある夜、身分の高そうな武士が現れ、「我が主君があなたの琵琶を聴きたがっている」と彼を連れ出します。
案内された豪華な屋敷で、芳一が壇ノ浦の戦いのくだりを弾き語ると、周囲の貴人たちは一斉に声を上げて悲しみに泣き崩れました。しかし、芳一が連日通っていたその場所は、豪華な屋敷などではなく、平家一門の墓地(阿弥陀寺の墓前)だったのです。芳一は、壇ノ浦で死んだ平家の怨霊たちに呼ばれて演奏していたのでした。


へいけのおんりょう
平家の怨霊
01
盲目の琵琶法師・芳一は、平家物語を弾き語る天才でした。ある夜、身分の高そうな武士が現れ、「我が主君があなたの琵琶を聴きたがっている」と彼を連れ出します。
案内された豪華な屋敷で、芳一が壇ノ浦の戦いのくだりを弾き語ると、周囲の貴人たちは一斉に声を上げて悲しみに泣き崩れました。しかし、芳一が連日通っていたその場所は、豪華な屋敷などではなく、平家一門の墓地(阿弥陀寺の墓前)だったのです。芳一は、壇ノ浦で死んだ平家の怨霊たちに呼ばれて演奏していたのでした。

02
このままでは芳一が怨霊に殺されてしまう(海へ引きずり込まれる)と気づいた和尚は、芳一の全身に「般若心経」の経文を書き写し、怨霊から姿が見えないようにする結界を張りました。
夜になり、芳一を迎えに来た怨霊の武者ですが、経文の力で芳一の姿が見えません。しかし、和尚が「両耳」にだけ経文を書き忘れていたため、怨霊からは空中に耳だけが浮かんでいるように見えました。「返事がないから、せめて耳だけでも主君へ持ち帰ろう」と、怨霊は芳一の耳をブチッと引きちぎって持ち去ってしまいました。

03
この恐ろしくも悲しい怪談は、平家滅亡という史実がベースになっています。
壇ノ浦で幼い安徳天皇や一族が次々と海へ沈んでいった悲劇は、当時の人々に強烈なトラウマを植え付けました。海峡の急流や海難事故はすべて「平家の怨霊の仕業だ」と恐れられ、彼らを慰めるために琵琶法師たちが『平家物語』を語り継いだのです。怨霊たちが芳一の琵琶を聴いて泣いたというのは、「自分たちの無念を誰かに分かってほしい」という、歴史の敗者たちの切実な願いの表れでもあります。

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