01
伝承:番町皿屋敷と播州皿屋敷
お菊の怪談には、大きく分けて二つの有名なバージョンがあります。
一つは江戸(東京)を舞台にした『番町皿屋敷』。旗本の青山主膳の屋敷で、お菊が家宝の皿を割ってしまい、激怒した主人に手打ちにされて井戸に捨てられる物語です。もう一つは兵庫県姫路市を舞台にした『播州皿屋敷』で、こちらはお家騒動の陰謀に巻き込まれたお菊が、皿を隠された濡れ衣を着せられて殺されるという、よりドラマチックな構成になっています。


おきく
お菊
01
お菊の怪談には、大きく分けて二つの有名なバージョンがあります。
一つは江戸(東京)を舞台にした『番町皿屋敷』。旗本の青山主膳の屋敷で、お菊が家宝の皿を割ってしまい、激怒した主人に手打ちにされて井戸に捨てられる物語です。もう一つは兵庫県姫路市を舞台にした『播州皿屋敷』で、こちらはお家騒動の陰謀に巻き込まれたお菊が、皿を隠された濡れ衣を着せられて殺されるという、よりドラマチックな構成になっています。

02
お菊の怪談は実話なのでしょうか。実は室町時代から江戸時代にかけて、主人が下女を惨殺して井戸に捨てるというような事件は実際にいくつも記録されています。
そうした「実際にあった残酷な事件」の断片が、講談師や歌舞伎の脚本家たちによって面白おかしく脚色され、「皿を数える幽霊」というキャッチーなホラーアイコンへと成長していきました。お菊さんは一人の実在の人物ではなく、身分制度の中で理不尽に殺された多くの女性たちの悲念が集合して生まれたキャラクターなのです。

03
江戸時代後期には、お菊の怪談があまりにも有名になりすぎた結果、奇妙なブームまで起きました。
サナギが後ろ手に縛られた女性の姿に見える「ジャコウアゲハの蛹」が、「お菊の怨念が虫に生まれ変わったものだ!」と噂され、「お菊虫」として見世物小屋で大流行したのです。幽霊がエンタメとして消費され、ついにはキャラクターグッズ(見世物)にまでなってしまうという、江戸の大衆文化のたくましさと残酷さを示すエピソードです。

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