金刀比羅宮

ことひらぐう

金刀比羅宮

Photo: baggio4ever / Wikimedia Commons / CC BY 3.0

金刀比羅宮|人間の代わりに「犬」がお参り? 金刀比羅宮が誇る江戸時代の巨大な信頼ネットワーク

基本情報

名称
金刀比羅宮
読み
ことひらぐう
所在地
香川県仲多度郡琴平町892-1
創建・鎮座
不明(大物主神が象頭山に行宮を営んだ跡と伝わる)
御祭神
大物主神、崇徳天皇
位置づけ
神道の神社
主な見どころ
御本宮、1368段の石段、旭社、こんぴら狗の銅像
主な祭事・信仰
地域に伝わる祭事と信仰。大物主神、崇徳天皇、森の石松

01

ご主人様の代わりに旅に出る「こんぴら狗」

江戸時代、庶民にとって旅行は厳しく制限されていましたが、伊勢神宮や金刀比羅宮への参拝だけは特例として許されていました。しかし、江戸(東京)や東北から四国の香川県まで歩いて行くには、莫大な費用と体力が必要で、病気や高齢の者には不可能です。

そこで生まれたのが「代参(だいさん)」という、他人に代わりにお参りに行ってもらうシステムです。そして驚くべきことに、人間の代わりに「飼い犬」を代参に行かせる風習が存在しました。これが「こんぴら狗(いぬ)」です。

飼い主は、犬の首に「こんぴら参り」と書かれた木札と、初穂料(お賽銭)や道中のエサ代を入れた袋をくくりつけます。そして、街道を旅する人々に犬を託し、金刀比羅宮を目指させたのです。

ご主人様の代わりに旅に出る「こんぴら狗」
ご主人様の代わりに旅に出る「こんぴら狗」

Photo: Wikimedia Commons

02

名もなき人々の「善意のバトンリレー」

GPSもドッグフードもない時代。一匹の犬がどうやって江戸から四国までたどり着けたのでしょうか。

それは、道行く人々の「完全な善意のリレー」によるものでした。「こんぴら参りの犬だ」と気づいた旅人や街道の住人が、犬を自分の行く方向まで連れて行き、ご飯を与え、宿に泊まらせ、また次の旅人へと引き継いでいったのです。

犬の首袋に入っているお金を盗むような悪党は(罰が当たることを恐れて)ほとんどおらず、無事に金刀比羅宮に到着した犬は、神官にお札をもらい、再び人々の善意のリレーによって飼い主の元へと帰っていきました。

名もなき人々の「善意のバトンリレー」
名もなき人々の「善意のバトンリレー」

Photo: Wikimedia Commons

03

厳しすぎる石段が演出する「到達のカタルシス」

金刀比羅宮の石段はなぜこれほど長いのでしょうか。象頭山(ぞうずさん)という山の中腹に社殿がある地形的な理由もありますが、この「肉体的な苦痛」こそが信仰を深める装置として機能しています。

息を切らし、足の痛みに耐えながら一段一段登っていく行為自体が、日常の穢れを落とす修行(禊)となります。そして785段を登り切り、視界が開けて讃岐平野の絶景と巨大な御本宮が目に飛び込んできた瞬間のカタルシス(達成感)。その感動があるからこそ、「こんぴらさんには御利益がある」と人々は強く信じたのです。

境内には現在、可愛らしい「こんぴら狗の銅像」が建てられています。この銅像は単なるマスコットではなく、江戸時代の日本社会がいかに治安が良く、見知らぬ人同士の「信仰を介した信頼関係」で結ばれていたかを証明する、誇り高き歴史のモニュメントなのです。

厳しすぎる石段が演出する「到達のカタルシス」
厳しすぎる石段が演出する「到達のカタルシス」

Photo: z tanuki / Wikimedia Commons / CC BY 3.0

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